財産分与での譲渡で起きた土地の賃貸借をめぐるトラブルQ&A!

土地の賃借人の承諾を得ることなく借地上の建物の共有持分を譲渡したところ、賃借人から契約解除、明け渡しを求められています。

Q:当社の顧客は土地を賃借し、長年、妻と息子が共有する建物で、息子の妻も一緒に生活していました。先日息子夫婦が離婚。その際、息子は財産分与として建物の共有持分を息子の妻に譲渡したそうです。土地の賃借人である顧客がこれを容認したところ、土地の賃貸人が、「建物共有持分の譲渡を容認したことは土地の無断転貸に当たる」として、土地賃貸借契約の解除を主張。離婚により息子が建物から出て行ったこと以外は建物の利用状況に変更はないそうですが、顧客は土地を明け渡さなければならないのでしょうか?

A:土地を明け渡す必要はありません。

なぜ財産分与として建物の共有持分を他者に譲渡した土地は無断転貸にならないのか?

本事案では、借地上の建物の共有持分の譲渡がなされており、土地賃貸人はこれが土地の賃借権の無断転貸にあたると主張しています。

借地上の建物の共有部分の譲渡がなぜ土地の賃借権の無断転換になるのかを疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、借地上の建物の所有権を譲渡すると土地の賃借権も一緒に処分されることになりますので、息子が建物の共有持分を妻に譲渡したことを土地賃借人が土地賃貸人の承認なく容認した場合、土地の賃借権を無断で転貸したことになってしまうのです。

では、本事案では、土地の無断転貸を理由に土地の賃貸借契約は解除されざる得ないのでしょうか。

この点、賃貸借契約において、無断譲渡または無断てんかんがなされた場合に賃貸人が賃貸借契約の解除を主張することができるのは(民法612条)、無断譲渡または無断転貸が、賃貸人と賃借人との信頼関係を破壊するに至る十分な事由であると考えられているためです。

そのため、仮に無断譲渡または無断転貸が行なわれたとしても、それが賃貸人と賃借人との信頼関係を破壊するに至らない特別の事情が認められる場合には、賃貸人による賃貸借契約の解除は認められないことになります。

この点、本事案と同様のケースにおいて、最高裁平成21年11月27日判決は、

  1. 持分譲渡は賃借人の子からその妻に対し、離婚に伴う財産分与として行なわれたものであること
  2. 賃借人の子の妻は、離婚前から借地上の建物において賃借人と同居しており、賃借人の子が建物から退去したほかは、土地の転貸によって借地の利用状況に変化が生じていないこと
  3. 賃貸人は土地の転貸により不利益を被っていないこと

を指摘し、賃貸人と賃借人の信頼関係を破壊するに至らない特別の事情にがあるとして、無断転貸によっても、土地賃貸人による土地賃貸借契約の解除は認められないものとしました。

本事案においても、前記最高裁判決と同様に賃貸人と賃借人の信頼関係を破壊するに至らない特別の事情が認められますので、土地賃貸人による土地賃貸借契約の解除は認められません。

アドバイス

借地上の建物の所有権を譲渡すると、土地の借地権も譲渡されることになります。土地賃貸人の承諾を得ることなく借地上の建物所有権を譲渡してしまうと、土地賃貸人が無断譲渡ないし無断転貸を理由に土地賃貸借契約の解除を主張するという深刻な法的紛争を誘発することになりかねません。

そのため、不動産事業者としては、借地上の建物の売買または売買の仲介を行なうに際し、建物所有権の譲渡に伴い移転する借地権の譲渡について、あらかじめ土地賃貸人の承諾を取得しておくことを失念しないよう注意が必要です。

なお、土地賃貸人が前記承諾を行なわない場合には、裁判所から承諾に代わる許可を取得することができれば建物を継続して利用することができます(借地借家法19条1項)。