賃料不払いからくる土地の賃貸借契約トラブルQ&A

「賃料不払いによる土地の賃貸借契約解除」の際の通知義務を怠ったとして建物の抵当権者から損害賠償をされたのですが…

Q:賃貸人Xは、Yに土地を賃貸していました。Yは借地上に建物を建てる際、建築資金の融資を受ける為に、建物にA(金融機関)を抵当権者とする抵当権を設定しました。Aは抵当権を設定するあたり、事前にXから「借地人に賃料不払いなどの責務不履行の事態が発生したときには賃貸借契約の解除に先立って借地上建物の抵当権者に通知する旨の条項」が記載された念書を取得していました。

XがYの賃料不払いを理由に土地賃貸借契約を解除し借地上の建物を収去したところ、Aは、Xが念書に記載された通知義務を怠ったことにより、抵当権が消滅するという損害を被ったとして、Xに対し損害賠償を請求しています。

A:事前通知条項の内容をXが理解できなかったといった特段の事情がない限り、Xは、事前通知義務違反を理由に損害賠償義務を負わなければなりません。

 

「賃料不払いによる土地の賃貸借契約解除」の通知義務を理由に損害賠償義務を負うのか?

借地上の建物に設定された抵当権の抵当権者は、借地人の賃料不払いにより借地の賃貸料契約が解除されると、抵当権を失ってしまうことになります。抵当権者が、借地人が賃料不払いを開始したことを知った場合には、借地権者に代わって賃料を支払うこと(第三者弁済、民法474条)により借地の賃貸借契約が解除されることを防ぐことができますが、借地人が賃料不払いを開始したことを知ることができなければ知らない間に借地の賃貸借契約が解除され不測の損害を被ることになりかねません。

そこで、実務上一般に、抵当権者は、借地上の建物に抵当権の設定を受けようとする場合、借地権設定者から、事前に借地人に賃料の不払いなどの責務不履行の事態が発生したときには賃貸借契約の解除に先立って抵当権者に通知する旨が記載された念書を取得することとしています。

本事案では、借地の賃貸人が抵当権者に対して前記内容の念書を差し入れていたにもかかわらず、借地人の賃料不払いの事実を抵当権者に通知することなく、土地賃貸契約を解除し借地上の建物を収去してしまったため、抵当権者は建物喪失という損害を被ってしまいました。

この点、本事案と類似したケースにおいて、最高裁平成22年9月9日判決は、借地の賃貸人が不動産賃貸業を営む会社であったことを勘案した上で、前記内容の念を差し入れた借地の賃貸人は、借地人の地代不払いの事実を土地賃貸借契約の解除に先立ち抵当権者に対して損害賠償義務を負うことを認めました。

従って、本事案においても、借地の賃貸人が念書に記載された事前通知条項の趣旨を理解できなかった等の特段の事情がない限り、借地権設定者は抵当権者が被った損害を賠償しなければならないことになります。

アドバイス

前記最高裁判決により、借地の賃貸人は、借地人に賃料不払いなどの債務不履行の事態が発生したときには賃貸借契約の解除に先立って抵当権者に通知することなく土地賃貸借契約を解除してしまうと、特段の事情がない限り、損害賠償義務を負うことが明らかとなりました。

借地の賃貸に関与する方は、借地上の建物の抵当権者が要請する念書に記載された事前通知条項が法的義務を定めたものであることを認識した上で、借地人が賃料不払いを開始した場合には、抵当権者に対して通知することを怠らないようにしてください。また、念書を差し入れたことを忘れないようにするため、抵当権者から、差し入れた念書の写しの交付を受けて保存するように心掛けてください。